
学生たちの成長を陰ながら支える大学職員。今回は、入試広報・就職支援を経て、現在は事務局長として大学全体の運営に携わる権藤拓さんにお話をうかがいました。北海道武蔵女子での仕事への思いや、学生へのメッセージをたっぷり語っていただきました。
■自己紹介をお願いします
こんにちは。札幌出身の権藤です。昭和45年3月生まれの55歳になります。趣味は旅行、ドライブ、そしておいしいものを食べること。リフレッシュも兼ねて、時間を見つけては各地に出かけています。
最近は「全国47都道府県制覇」を目標に掲げていて、ここ数年でぐっと達成率が上がりました。昨年は四国地方を、今年は九州をレンタカーでドライブしながら周遊。現地ならではのグルメを堪能しながら、地元の人とのふれあいも楽しみのひとつです。たとえば、高知のかつおのたたきや、鹿児島の黒豚しゃぶしゃぶなど、どこへ行っても「やっぱり本場は違うな」と感じますね。
プライベートでは、社会人の娘と息子がいます。娘は5年前に武蔵を卒業し、今は営業職として奮闘中。
■学生時代はどんなことをしていましたか?
北海学園大学に進学し、4年間の学生生活は、いわゆる「アルバイト漬け」の日々でした。特に長期休みは、トマムのリゾート施設で住み込みのバイトに励みました。レストランのホール係やゴルフ場のスタートハウス、ラウンジ、さらにはディスコのスタッフまで。今ではなかなかできないような経験を、一気に詰め込んだ4年間だったと思います。
平常時は、京王プラザホテルで宴会スタッフとして4年間継続。結婚式や企業パーティーなどの裏方を担う仕事で、スピードと正確さが求められました。準備から片付けまでをチームで動かす中で、連携の大切さ、相手を思いやる動き方、そして「段取り力」が自然と身についたと感じています。
ちなみに当時の自慢は、瓶ビールの栓を抜くスピードが仲間達より速かったこと(笑)。宴会が立て込んでいるときには、ちょっとした特技が役立ちました。

■卒業後はどんな仕事を?

北海学園大学を卒業後、北海道内の大手卸売企業に入社し、約11年間、営業職として勤務しました。担当していたのは主に教育機関で、大学や高校、札幌市教育委員会などに対して、パソコン、オフィス家具、文房具、教室の什器などを提案・販売していました。
印象に残っているのは、札幌市内に新設される大型の複合公共施設の案件です。営業担当者としてこの物件を任せてもらい、大きなプレッシャーと同時にやりがいも感じました。お客様のところに何度も通い、図面を何度も書き直しながらようやく受注。受注に至るまでが大変だったんですが、その後の納品調整も相当でした。納品スケジュールや搬入経路の調整、各メーカーとのやり取りなど、「営業」というよりも“現場監督”のような感覚で、臨機応変な対応が求められました。
新築現場に完成前から関わることで、お客様との信頼関係も築けましたし、最終的には追加で必要となる備品や消耗品も任せてもらえるようになり、結果として全体で1億円を超える売上につながり、自分の仕事への自信にもなりました。
営業の仕事では、「モノを売る」より「人として信頼される」ことを大切にし、訪問先で世間話を交えながら雑談をして、相手のニーズや困りごとを自然と引き出すように心がけていました。最終的には「困ったらまず権藤さんに聞いてみよう」と思ってもらえる関係づくりを意識していましたね。
そしてもう一つ、仕事はチームでするもの。仕入れ先のメーカーさん、オフィス家具に詳しい先輩、設計室の先輩、パソコンやネットワークに詳しい同僚など、皆に助けてもらって受注に至ることができました。本当に感謝しています。
■大学職員になったきっかけとこれまで

大学職員として武蔵に入職したのは平成15年(2003年)。当時、取扱商品が幅広い営業の仕事に限界を感じていた頃で、「自分の職場(大学)を売り込む」という大学の入試広報職員の仕事に魅力を感じて、転職を決めました。
営業職で身につけた「相手の立場に立つ力」や「段取り力」は、大学という新しい環境でもしっかり生きました。入職後最初の7年間は入試広報課に所属し、道内外の高校を訪問して進路指導の先生と面談したり、大学案内やリーフレットの作成、オープンキャンパスの企画・運営に携わったりしていました。
当時はまだスマホもなく、連絡手段は電話か携帯メール。情報発信の手段にも制限があり、卒業生や在学生への連絡にも苦労していたことを覚えています。
その後14年間は就職課に勤務。主に企業担当者として、企業と学生の橋渡しをする役割を担いました。
平成21年4月、就職課に異動したばかりの頃は、リーマンショックの影響で求人が激減。「求人票がまったく届かない」という今では考えられない状況でした。自分にできることは何かを考えた結果、まずは「困ったときに声をかけてもらえるような企業様との関係づくり」を意識するようになりました。
最初は企業様を訪問して「よろしくお願いします」と挨拶しても、正直あまり手応えがありませんでした。そこで、訪問後にお礼の手紙を郵送するようにしました。そこには、自分の出身地や出身大学、趣味や家族構成など、少しでも人となりが伝わるようなことも書き添えました。
これは営業職時代に上司がやっていたことを真似しただけなんですが、大学職員としては珍しかったようで、何人かの企業の方から「手紙読みましたよ」「親しみが湧きました」と声をかけていただけました。
ちなみに反応があったキーワードで多かったのが、「子供の野球チームの父母会長」と「出身大学」でした(笑)。
直接、学生の皆さんの履歴書指導や面接練習を担当していたわけではないんですが、企業の方から「武蔵の学生を採用して良かった」と言ってもらえたとき、それを学生に伝えて喜んでいる顔を見たときには、とてもやりがいを感じました。
忘れられない出来事があります。欠員が出るたびに本学の学生を採用してくれていた企業様があり、ある年も、本命企業として志望していた学生がいました。彼女は精一杯頑張って準備したのですが、残念ながら最終面接で他大学の学生に競り負けてしまい、内定を得ることができませんでした。とても落ち込んでいたのを覚えています。
ところが数か月後、その企業様から夜8時ころ大学に電話があり、「内定を出した学生から辞退され困っている。前回最終面接まで残った学生さんがまだ就職活動中であれば、もう一度チャレンジしてほしいので本人の意思を確認してもらえませんか」とお話をいただきました。
すぐに本人に連絡すると、「ぜひ受けたいです」と力強い返事。企業にその旨を伝えると、「ではもう内定を出します」とその場で決めてくださいました。日頃から企業の方と信頼関係を築いていたからこそ実現した、本当に嬉しい出来事でした。
現在は事務局長として、教務、学生支援、就職、経理、総務など幅広い業務を統括しています。
大学全体が一つのチームとして機能することが、学生支援の質を高めることにつながると考えています。どの部署も、最終的には学生のためにある。だからこそ、横のつながりを大切にしながら、よりよい環境づくりを目指しています。
■学生と接するときに大事にしていることは?
1.ルールと時間を守ること
社会に出ると、約束を守ること、時間に遅れないことは当たり前のマナーです。だからこそ、在学中から「時間厳守」や「自己管理」を意識して行動してほしいと伝えています。もちろん、困ったときには相談に乗りますが、“甘え”に流されることなく、自立の第一歩としてルールを大切にしてほしいと思います。
2.公平性を大切に
学生の対応をしていると、特別な事情に対応してあげたい場面もあります。でも一人に特別扱いをすると、他の学生にも同じことをしなければなりません。だからこそ、「自立支援」の立場に立ち、公平で納得感のある対応を心がけています。
3.“売る”ではなく、“育てる”
営業時代は「どうすれば売れるか」を考える日々でしたが、教育の現場では“売る”ではなく“育てる”が使命です。学生が自ら考え、成長していくプロセスを大切にしています。だからこそ、すぐに答えを教えるのではなく、ヒントを与えて考えさせる。その積み重ねが、社会に出たときの自信につながると信じています。
■学生・高校生にメッセージをお願いします!
進路や就職で迷うのは、ごく自然なことです。まだ経験も情報も少ない中で、ひとりで結論を出すのは難しいもの。そんなときは、遠慮せずに周囲の大人に相談してみてください。自分だけでは気づけなかった視点や可能性が、きっと見えてくるはずです。
大学の就職支援スタッフは、言ってみれば「就職活動のプロ」です。内定が決まるまで、二人三脚で伴走する“伴走者”として、どんどん頼ってください。
また、就活で求められるのは、知識やスキルよりも「基本的な人間力」。マナー、リアクション、挨拶…そんな小さな積み重ねが、信頼や印象に大きく影響します。日常生活の中から、少しずつ意識していきましょう。
そして社会に出たら、「受け身にならず、積極的に関わる姿勢」こそが評価されます。与えられた仕事をこなすだけでなく、「もっとこうしたら良くなるのでは?」と日頃から考える姿勢。それがあなた自身の成長と、周囲からの信頼につながります。
■最後にひとこと!
気づけば、学生たちの保護者世代をも超える年齢になりました。だからこそ、親の視点も交えながら、学生一人ひとりの毎日が実りあるものになるよう応援したいと思っています。
私は、北見・オホーツク方面の高校訪問も担当しています。進学後、保護者から「この大学に入れてよかった」、そして学生から「武蔵に来て本当によかった!」という言葉をいただけると、本当にこの仕事をしていてよかったと心から感じます。
学生の皆さんが、大学生活を通してたくさんの学びや出会いを経験し、将来につながる力を身につけていけるよう、職員一同、全力でサポートしていきます!
お問合せ先、質問は
北海道武蔵女子大学・短期大学 入試広報課 まで
TEL 0120-634-007(入試広報課フリーコール)