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キッズデザインプロジェクト「イルカのじかん」が教えてくれること ― 小樽の海と生きるおたる水族館の物語 

北海道武蔵女子大学 経営学部2年 渡邉 日葵さん・津田 理名さん × おたる水族館 伊勢伸哉 館長 対談

海とともに生きるまち、小樽。
その海を間近に感じられる場所――おたる水族館。
1958年の開館以来、地元の海や生き物と人々をつなぎ続けてきたこの施設は、今、大きな転換期を迎えています。
「イルカショー」から「イルカのじかん」へ。華やかさよりも、“本来の姿を伝える”ことを重視した展示や取り組みが始まりました。

今回、北海道武蔵女子大学 経営学部2年の渡邉日葵さんと津田理名さんが、おたる水族館 伊勢伸哉館長にインタビュー。
「楽しい」から「学び」へ、そして「気づき」へ。
水族館が果たす役割、地域とのつながり、そして未来への想いを伺いました。

はじめに ― 小樽の海を前にして

今日はお忙しい中、ありがとうございます。
館長さんに直接お話を伺えるなんて、とても楽しみにしていました!

こちらこそ、ようこそ、おたる水族館へ。
今日は少し風が強いけれど、海の色がとてもきれいでしょう?
この海を見ながら話すと、自然と海の話になるんですよ(笑)

本当ですね。海がすぐ目の前にあるって、すごく贅沢な環境だなと思いました。水族館の建物のデザインも、どこか懐かしくて温かい雰囲気がありますね。

ありがとうございます。もう築50年を超える建物です。古さもありますが、それがこの場所の味なんです。
私たちは“最新型のアミューズメント”ではなく、“この土地に根づく水族館”であることを大事にしています。

イルカショーから「イルカのじかん」へ

お二人にとって、おたる水族館ってどんな施設だと思いますか?

他の水族館はあまり行ったことがないんですが、おたる水族館は“どこか違う”と感じます。
ただ生き物を見るだけじゃなくて、自然の力や人との距離の近さを感じられる場所だと思います。

私もそう思います。
それに、「イルカショー」が「イルカのじかん」という名前に変わったって聞いて、ちょっとびっくりしました。
どうして変えたんですか?

「ショー」という言葉には、やはり“人間が楽しむために動物に芸をさせる”という印象がありました。
でも私たちは、イルカを「見せ物」ではなく「生き物」として理解してもらいたかったんです。
イルカたちの持つ本来の能力や魅力を、そのままの姿で伝える”時間”にしたい――そういう想いで「イルカのじかん」と名付けました。

確かに、「ショー」というと“見せる”印象がありますけど、「じかん」だと一緒に過ごす感じがします。
見ているうちに、イルカたちの性格や関係性まで感じられる気がしました。

見せ方の工夫だけじゃなくて、考え方そのものが変わったんですね。
「イルカのじかん」を見てみて、イルカの食べているものや体の特徴なんか、知らなかったことばかりで、とても楽しくて気づくことの多い”時間”でした。 

そう言ってもらえると嬉しいですね。
イルカも私たちと同じで、日によって機嫌も違うし、性格もバラバラ。
それを“そのまま”見せるのがこの”時間”の魅力なんです。
無理に芸をさせるのではなく、イルカ自身が楽しんでいる姿を見てほしいんですよ。

イルカたちを見たあとに学びが残るというか、ただ“かわいい”だけじゃなく、“へぇ、そうなんだ”って思えるのが新しいですよね。

そうそう。私たちは“学びながら楽しめる”というバランスを大事にしています。楽しくなければ記憶に残らない。だけど、学びがなければ心に響かない。
その間にあるものが、私たちの目指す「イルカのじかん」です。

おたる水族館の65年と地域の記憶


おたる水族館が開館したのは1958年。今年で65年になります。最初は「北海道大博覧会」の海の会場として、小樽市が誘致してつくったんです。
当時は車も少なく、バスもほとんどなかった。だから、地元の漁師さんたちが自分の漁船でお客さんを港から水族館まで運んでくれました。
安全基準も今とは全く違う時代ですが(笑)、地元の人たちの情熱で成り立っていたんです。
たった3か月で78万人が来館しました。今でもその記録は破られていません。

すごいですね! 交通の便も悪い中でそれだけの人が来たなんて。

地元の人たちの協力で成り立っていたんですね!
今も“地域の水族館”としての雰囲気が残っているのは、その名残かもしれませんね。

そうなんです。だから今でも、おたる水族館の基本は「地元の生き物を伝える」こと。北海道の海に暮らすトドやアザラシ、カレイの仲間のオヒョウやニシンなど、身近な生き物を中心に展示しています。
ここでしか見られない“北の海のリアル”を知ってもらうのが使命なんです。

お客さんを迎える“気持ち”が昔から変わらず続いているんですね。
観光地というより、地元の海の文化を伝える場所なんだなと感じました。

まさにその通りです。うちは“地元の海をそのまま伝える”のが原点。
派手さよりも、北海道の海に生きる魚や哺乳類の“リアル”を見てもらうことが目的なんです。

「かわいい」から始まる自然との出会い

水族館で大事にしているのは、“知識よりも感動”です。
「かわいい」「すごい」「大きい」「怖い」――そういう素直な感情が、自然への入り口になります。
そこから「どうして?」という疑問が生まれる。そこに学びがあるんです。

たしかに、SNSの映像だけでは感じられない“生き物の匂い”とか“動きの迫力”がありますよね。

小さい子でも「かわいい!」って感じることが最初の一歩なんですね。

その通りです。そういう感動を通して、自然や命への敬意が育つ。
教えるより、“感じてもらう”ことが一番大切なんです。

KDPのペーパークラフトで生き物を「つくる」体験の意味

今回の北海道武蔵女子大学KDPのワークショップ「ペーパークラフトをつくろう」は、そうした“体験型の入り口”なんですよ。
紙一枚から立体の生き物をつくる過程で、「この形ってそういう理由だったんだ」と気づく瞬間がある。
それが学びです。子どもたちにとっても、大人にとっても新しい発見があります。

作りながら生き物の形を知る、って面白いですよね。
完成したときの達成感もあるし、家に持ち帰ってもう一度思い出せるのもいいです。

「見る」だけじゃなく、「作る」ことで感じ方が変わりますね。

そうなんです。おたる水族館としても、こうした“参加できる”企画は初めての試みなんです。
北海道武蔵女子大学の皆さんと一緒に新しい切り口をつくれたことは、とてもありがたいです。

北海道全体でつながる動物園・水族館ネットワーク

実は私たち、旭山動物園のワークショップにも参加してきたんです。 
同じ“動物を伝える”場でも、動物園や水族館によってテーマや見せ方が全然違ってすごく新鮮でした。

また、円山動物園で開催したEarthdayのイベントにもKDPとして参加しましたが、どこの展示も個性があって、それぞれの地域らしさが出てますよね。 

そうですね。北海道内の9つの動物園・水族館は連携していて、先日KDPの皆さんにも参加してもらった円山動物園のEarthdayも旭川動物園のあにまるハッピーマーケットもこの連携のひとつとして参加しているんですよ。 

また、この9つの園館の連携では、お互いの強みを生かし合いながら運営しています。 
例えば、おたる水族館にはトドやセウチがいるし、登別マリンパークニクスにはカマイルカ、千歳水族館ではサケの人工授精体験ができる。 
それぞれが“その土地ならでは”の展示を持ち寄って、北海道全体で自然を伝えているんです。 
年パスの相互割引もありますよ(笑)

そんな仕組みがあるんですね!知らなかったです。

それぞれの施設が“得意分野”を持ってつながっているのが素敵です。

北海道の自然と共存するということ

北海道って本当に特別な場所なんですよ。
たとえばエゾヒグマ。北海道には500万人の人が住んでいるんですが、そこに3万頭もクマが生息している地域なんて、世界でもここだけです。
でもその一方で、山から町に出てくるクマとの軋轢も起きています。
それだけ自然と人が近いということです。
だからこそ、水族館や動物園が“自然を感じ、考えるきっかけの場”にならなければいけないと思っています。
「イルカがすごい」→「海がきれいな方がいいよね」→「じゃあゴミを減らそう」
そういう小さな気づきが、社会全体を変える力になるんです。

“楽しい”体験が、“考える”きっかけになるんですね。

自然と人が共に生きるためのヒントが、おたる水族館の中にある気がします。

地域性を大切にした展示とこれからの課題

展示で一番好きなのは、実はカレイの仲間の「オヒョウ」なんですよ。
北海道にはたくさんの種類がいて、30年、40年生きる長寿の魚です。
北の海は栄養が豊富で、魚が大きくなる。南の海にはカラフルな魚が多いけれど、北の海には“力強さ”があります。
それを知ってもらうことが大事なんです。

でも、設備の老朽化や海水温の変化など課題も多い。
地域性を生かしながら、どう次の世代へつないでいくかが今のテーマですね。

地味な魚にもドラマがあるんですね。展示の見方が変わりました。

地域とともに進化する水族館、って感じがします。

「楽しい」から「気づき」の未来へ

結局のところ、私たちが伝えたいのは“楽しさ”なんです。
でも、その楽しさの中に「気づき」があれば最高です。
「ゴミはゴミ箱に」「電気を消そう」――そんな行動につながる意識を持ってもらえたら、社会はきっと良くなる。
だから、水族館は“学びの場”でありながら、“笑顔の場”でもありたいんです。
それを知ってもらうことが大事なんです

今日のお話を聞いて、水族館の見方がすごく変わりました。

私もです。これから行くときは、棲む環境などの背景も意識して見たいです。

こちらこそ、素敵な質問をたくさんありがとうございました。
またいつでも遊びに来てくださいね。
イルカたちも待ってますよ(笑)

今日は本当にありがとうございました!

おたる水族館の館長の言葉には、「伝える」ことへの真摯な想いと、地域への深い愛情が込められていました。「ショー」から「じかん」へ――その小さな言葉の変化の中に、動物への敬意と人との共存への願いが息づいています。

北海道武蔵女子大学 渡邉さんと津田さんにとって、この対談は“デザイン”や“ブランディング”を超えた、心の学びの”時間”となりました。
目に見える形だけでなく、人の心を動かす「意味」をどう届けるのか。
その問いは、これから社会に出る彼女たちの未来へのヒントとなるはずです。

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